EC商品画像をAIで作るだけでは足りない|商品との一致・素材管理・承認までの業務設計
2026.10.24
生成AIを使えば、背景を差し替えた商品画像や着用イメージを、撮影をせずに短時間で作れるようになりました。一方で、担当者がそれぞれのツールで画像を作り始めると、「色が実物と違うと問い合わせが来た」「どれが最新の画像か分からない」「この画像を広告に使ってよいのか誰も答えられない」といった問題が出てきます。原因は生成AIの性能ではなく、作った画像を商品と照らし合わせ、記録し、承認してから掲載する流れが決まっていないことにある場合が少なくありません。
ここでいう商品画像の業務設計とは、画像を作る工程だけでなく、商品との一致の確認、ブランドの確認、画像の保存と再利用、掲載の承認までを、誰がどの基準で行うかを決めることです。この記事では、EC責任者や商品企画・制作管理の担当者に向けて、次の5つの手順で整理します。
- 1工程と担当を決める — 依頼から承認・掲載までの工程を分け、工程ごとに担当を決める
- 2参照素材をそろえる — 商品情報・実物の写真・色見本をそろえ、色・形・細部の基準を決める
- 3二段階で確認する — AIと自動チェックで一次確認し、人が商品・ブランド・権利・掲載の可否を判断する
- 4画像と情報を紐づける — 商品ID・版・作り方・利用条件・承認状況を画像と一緒に記録する
- 5測って直す — 採用率・承認までの時間・差し戻しの理由・再利用・掲載後の指摘を測り、基準を見直す
なぜAIで商品画像を作るだけではうまくいかないのか?#
画像を作る速さは上がっても、作った画像が正しいかを確かめ、管理する仕組みが追いついていないからです。撮影と制作を外部に任せていたころは、撮影の指示書や納品物の確認が自然と工程に組み込まれていました。生成AIは担当者が自分の席で画像を作れるため、その確認の工程が抜け落ちやすくなります。
担当者ごとに画像を作り始めたときに起きやすい問題は、次のとおりです。
- 実物との食い違い — 色味・柄・パーツの数・ロゴの形が、生成の過程で実物と変わってしまう
- ブランド表現のばらつき — 背景の雰囲気や明るさが担当者ごとに違い、商品ページの見た目がそろわない
- 保存場所と版の混乱 — 個人のフォルダやチャットに画像が散らばり、どれが最新で、どれが承認済みかが分からない
- 利用条件の記録がない — どのツールで作り、どの媒体で使ってよいのかが残っておらず、再利用のたびに確認し直す
- 承認する人が決まっていない — 作った担当者がそのまま掲載し、商品を知る人やブランドの担当者が見ていない
実物と違う画像を載せると、何が問題になるのか?#
もっとも避けたいのは、実物より著しく良く見える画像を、気づかないまま商品ページに載せてしまうことです。消費者庁は、景品表示法の優良誤認表示(商品の品質などを、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示す表示)について、「故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても」、優良誤認表示に該当する場合は規制されると説明しています(出典:優良誤認とは|消費者庁)。個別の表示が優良誤認表示に当たるかは事案ごとに判断されるため、迷う場合は弁護士などの専門家に確認してください。そのうえで、「AIが作ったので気づかなかった」は理由にならない、と考えておくのが安全です。
広告や商品の掲載先にも、画像の決まりがあります。たとえばGoogle Merchant Centerのヘルプでは、商品画像には「販売対象の商品がはっきりと写っている必要があります」とし、メインの商品と一緒に販売されない商品を画像に含めないよう求めています。さらに、生成AIで作成した画像には、AIで生成されたことを示すメタデータ(IPTC DigitalSourceType など)が含まれている必要があり、そのメタデータを削除しないよう定めています。保持すべき種類には、「合成要素を含む複合的な画像」も挙げられています(出典:商品画像リンク [image_link]|Google Merchant Center ヘルプ)。ヘルプに明記はありませんが、AIで背景を差し替えた画像など、AIで加工した画像にもこうしたメタデータが付くことがあり、ツールや設定によっては画像の圧縮やサイズ変更の処理で消えることがあります。掲載までの変換の工程で残るかを確かめておく必要があります。
生成から掲載まで、どの工程を誰が担うか?#
まず、依頼・生成・一次確認・商品とブランドの確認・承認と掲載の工程を分け、それぞれの担当を決めます。工程を分けずにいると、画像を作った人が確認も掲載も行うことになり、間違いに気づく機会がなくなるからです。
工程ごとの担当と、決めておくことの例は次のとおりです。
| 工程 | 担当の例 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| 依頼 | 商品企画・EC担当 | どの商品の、どの用途の画像が、いつまでに何点必要か |
| 生成 | 制作担当 | 使ってよいツール、参照素材、プロンプトの書き方 |
| 一次確認 | AIと自動チェック・制作担当 | 自動で確かめる項目(画像のサイズや背景など)と、引っかかったときの戻し方 |
| 商品・ブランドの確認 | 商品担当・ブランド担当 | 実物との一致とブランド基準を、誰がどの資料で見るか |
| 承認と掲載 | EC責任者 | 掲載してよい媒体と、差し替えのときの手順 |
画像の用途ごとに、AIに任せる範囲を変える#
すべての商品画像を同じ扱いにせず、用途ごとにAIの使い方と守ることを決めておきます。購入の判断に直接かかわりやすいのはメイン画像で、利用シーンの画像や広告のバナーとは求められる正確さが違うからです。
| 画像の用途 | AIの使い方 | 守ること |
|---|---|---|
| メイン画像 | 実物の写真を整える | 商品そのものを描き替えない |
| 利用シーン画像 | 背景やシーンをAIで作る | 商品の部分は実物の写真を使う |
| 広告・バナー | 背景や構図をAIで作る | 商品の色と形を実物に合わせる |
メイン画像は、実物を撮影した写真をもとに、背景の切り抜きや明るさ・傾きの調整にAIを使う範囲にとどめることをおすすめします。利用シーンの画像では、背景や小物をAIで作っても、商品の部分は実物の写真を合成する形にすると、色や形が変わるおそれを減らせます。ただし、利用シーンの画像はメイン画像として登録せず追加の画像として使い、AIで加えた小物が販売する商品に見えないようにします。広告・バナーでは、背景や構図をAIで作っても、商品の色と形は実物の写真に合わせ、広告を出す媒体の決まりもあわせて確認します。どの範囲までAIに任せるかは、商品の特性と掲載先の決まりを見て、社内で決めます。
商品と一致しているかを、何を基準に確かめるか?#
確認の基準は、商品情報・実物の写真・色見本という、比べるための材料をそろえることから始まります。比べる材料がないまま「実物と同じか」を判断しようとすると、確認する人の記憶に頼ることになり、担当者によって判断が変わるからです。
そろえておく参照素材は、次の3つです。
- 商品情報 — 品番、色名、サイズ、材質、付属品や同梱物の有無。商品マスタ(商品の基本情報をまとめた台帳)から取り出す
- 実物の写真 — 正面・背面・側面と、ロゴ・ボタン・縫い目・ラベルなどの細部。生成AIに参照させる素材にもなる
- 色見本 — 生地や塗装の色を確かめるための実物の見本、または撮影時に写し込んだ色の基準
品質確認シートは、確認する人まで決める#
参照素材をもとに、確認する項目と見るポイント、確認する人を1枚にまとめます。次の表は、そのまま品質確認シートの元として使えます。
| 確認項目 | 見るポイント | 確認する人 |
|---|---|---|
| 色 | 実物の写真・色見本と比べて、色味や柄の出方が違わないか | 商品担当 |
| 形・パーツ | 輪郭、丈、ポケットやボタンの数が実物と同じか | 商品担当 |
| 細部 | ロゴ・刺しゅう・ラベル・文字が崩れたり変わったりしていないか | 商品担当 |
| 付属品 | 販売しない小物が、商品の一部のように見えていないか | 商品担当 |
| サイズ感 | 利用シーンの中で、実物より大きく・小さく見えていないか | 商品担当 |
| ブランド表現 | 背景・明るさ・雰囲気がブランドの基準に合っているか | ブランド担当 |
| 権利と類似 | 既存の作品や他社の画像に似ていないか、ツールの規約に沿っているか | 法務・ブランド担当 |
権利の確認について、文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)は、AI生成物の利用に先立って、まず既存の著作物と類似していないかを確認することが必要だとし、その方法としてインターネット検索(文章検索・画像検索)の活用を挙げています。あわせて、利用しようとするAIサービスの利用規約を確認し、それに従って利用することも求めています(出典:AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス|文化庁著作権課)。
AIの一次確認と、人の確認をどう分けるか?#
確認は、AIと自動チェックで違いを拾い出し、人が判断する二段階に分けます。自動チェックとは、画像のサイズや背景色、余計な文字の有無などを機械的に確かめる仕組みのことです。AIは参照写真と生成した画像を比べて違いの候補を挙げることはできますが、その違いが購入の判断に影響するかどうかは、商品を知っている人にしか決められないからです。
AIと自動チェックで拾い出すことと、人が判断することの分担は、次の4点です。
- 参照写真との違いを挙げる → 商品と同じかを判断する — 色・形・パーツの差の候補を一覧にし、商品担当が実物と照らして決める
- 文字やロゴの崩れを探す → ブランド表現を確かめる — ラベルやロゴの崩れを拾い、ブランド担当が全体の見え方を確かめる
- 画像の規定を確かめる → 掲載してよいかを決める — サイズ・背景・余計な文字の有無を自動で確かめ、EC責任者が掲載先の決まりと照らして決める
- 似た画像を探す → 権利の問題がないかを判断する — 画像検索で似た画像の候補を挙げ、生成した人とは別の担当(法務やブランド担当など)が利用条件とあわせて確かめる
一次確認で引っかかった画像は、理由を付けて生成の担当に戻します。理由を「色」「パーツ」「ロゴ」のように分類して残しておくと、後でどの商品・どの作り方で差し戻しが多いかを数えられます。
画像と一緒に、何を記録して管理するか?#
画像のファイルだけを保存せず、商品ID・版・作り方・利用条件・承認状況を、画像と紐づけて記録します。ファイル名だけで管理すると、同じ商品の画像が増えるたびに、どれを掲載してよいのかを人に聞くことになるからです。
| 管理項目 | 記録する内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 商品との紐づけ | 商品ID・カラー・サイズ・画像の種類 | 商品ページへの掲載と差し替え |
| 版 | 版の番号・差し替えの理由 | 古い画像の掲載を防ぐ |
| 作り方 | 撮影・AI加工・AI生成の別と生成の記録 | 権利の確認と作り直し |
| 利用条件 | ツールの規約・使える媒体と期間 | 別の媒体での再利用 |
| 承認状況 | 確認した人・日時・判定 | 掲載の可否と改善 |
「生成の記録」には、使ったツール、プロンプト、参照させた写真を残します。文化庁の同じチェックリストは、依拠性(既存の作品をもとにしたかどうか)がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれる、としています。生成の記録は、権利の問い合わせに答えるためだけでなく、承認された画像と同じ条件で別のカラーの画像を作り直すときにも役立ちます。
管理の仕組みは、最初から専用のシステムを入れる必要はありません。共有ストレージの保存場所とファイル名の決まりに、上の5項目を記録する一覧表を組み合わせるだけでも始められます。商品数や掲載先が増えて、一覧表と商品マスタの二重管理が負担になってきたら、商品情報と画像を一緒に管理する仕組みを検討します。ECの商品情報・在庫・受注をどうつなぐかの全体像は、通販・D2Cのシステム戦略|EC・在庫・CRM・物流を止めずに伸ばす仕組みで整理しています。
うまくいっているかは、どう測るか?#
画像を作った枚数ではなく、確認を通って実際に掲載できた画像の割合と、そこまでにかかった手間を測ります。作る枚数が増えても、差し戻しと作り直しが増えていれば、制作の負担はかえって重くなるからです。
測る指標と、数え方の例は次のとおりです。
| 指標 | 数え方 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 採用率 | 作った画像のうち、承認を通って掲載できた割合 | 用途ごとに分けて数える |
| 承認までの時間 | 依頼から承認までにかかった時間と、作り直しの回数 | 確認する側の時間も含める |
| 差し戻しの理由 | 色・パーツ・ロゴ・ブランドなどに分類した件数 | 理由を自由記述にしない |
| 再利用の状況 | 承認済みの画像を別の媒体や時期に使った回数 | 利用条件の確認にかかった手間も見る |
| 掲載後の指摘 | 「画像と違う」という問い合わせや返品の理由 | 導入前の件数も控えておく |
数字は、導入前と同じ数え方で比べます。撮影や制作を外部に任せていた商品であれば、1商品あたりの費用と、依頼から掲載までの日数を、導入前の基準として控えておきます。差し戻しの理由で多いものは、参照素材や品質確認シートの見直しに反映します。たとえば「色」の差し戻しが特定の材質の商品に集中していれば、その材質の商品では色見本を必ず参照させる、あるいはAIでの生成をやめて撮影に戻す、といった判断ができます。
向かないケースと、よくある落とし穴は?#
すべての商品で、AIを使った画像の仕組みが必要なわけではありません。次のような場合は、撮影と従来の制作のほうが確実なことがあります。
- 色や質感そのものが購入の決め手になる商品 — 化粧品の色、生地の風合い、食品の見た目などは、わずかな違いが返品や問い合わせにつながりやすい
- 実物の写真がそろっていない — 参照させる写真がないと、AIは商品を推測して描くことになり、一致を確かめる基準もない
- 商品数や更新の頻度が少ない — 年に数点の新商品であれば、仕組みを作る手間のほうが大きくなる
仕組みを入れる場合のよくある落とし穴は、次の4つです。
- ツールだけを配る — 使い方の研修だけで、確認と承認の工程を決めないまま始めてしまう
- 作った本人だけで確認する — 実物を知らない制作担当だけで確認し、商品担当の目が入らない
- 承認済みの画像と下書きが同じ場所にある — 確認前の画像が、そのまま商品ページや広告に使われてしまう
- メタデータや生成の記録が残らない — 変換の工程でAIの生成情報が消え、後から作り方を説明できない
生成AIを社内で使うときのルールの作り方は、社内で生成AIを安全に使う|リスクと利用ガイドラインの作り方で、業務への広げ方は生成AIの業務活用ガイド|用途・進め方・費用・定着のポイントで解説しています。
まとめ#
EC商品画像にAIを使って成果を出すために必要なのは、画像を作るツールを選ぶことよりも、作った画像を商品と照らし合わせ、記録し、承認してから掲載する流れを決めることです。
- 問題の原因は、生成AIの性能よりも、確認・保存・承認の工程が決まっていないことにある。実物より著しく良く見える画像は、誤って載せた場合でも、優良誤認表示に当たれば景品表示法の規制対象になる
- 依頼・生成・一次確認・商品とブランドの確認・承認と掲載の工程を分けて担当を決め、画像の用途ごとにAIに任せる範囲を変える。メイン画像では商品そのものを描き替えない
- 参照素材として商品情報・実物の写真・色見本をそろえ、品質確認シートで確認する項目と確認する人を決める
- AIと自動チェックで違いを拾い出し、商品と同じか、掲載してよいか、権利の問題がないかは人が判断する
- 商品ID・版・作り方・利用条件・承認状況を画像と紐づけて記録し、生成に使ったプロンプトや参照写真も残す
- 採用率・承認までの時間・差し戻しの理由・再利用・掲載後の指摘を測り、差し戻しの理由を参照素材や確認基準の見直しに反映する
まずは、直近に作ったAI画像を10〜20点ほど集め、品質確認シートの項目で見直してみてください。どの項目で実物と食い違いやすいかが分かれば、どの用途からAIに任せるか、どこに人の確認を置くかを決める出発点になります。
よくある質問(FAQ)#
Q. メイン画像をAIで生成してもよいのですか?
A. 掲載先の決まりを満たしていれば使える場合もありますが、メイン画像は購入の判断に直結するため、実物を撮影した写真をもとに、背景や明るさを整える範囲でAIを使う形をおすすめします。掲載先ごとの画像の決まりも、あわせて確認してください。
Q. AIで作った画像であることは、記録しておく必要がありますか?
A. 記録を前提にしておくのが安全です。Google Merchant Centerのように、AIで生成したことを示すメタデータを画像に残すよう求める掲載先があります。また、権利の問い合わせや作り直しに備えて、使ったツール・プロンプト・参照写真も残しておくと説明しやすくなります。
Q. 確認の工程を増やすと、AIで速く作れる利点がなくなりませんか?
A. 一次確認をAIと自動チェックに任せ、人は違いの候補を見て判断するだけにすれば、確認の手間を抑えられます。差し戻しの理由を参照素材や確認基準の見直しに反映していくと、同じ理由での作り直しが減り、全体の時間も短くなっていきます。
Q. 画像の管理は、専用のシステムがないと始められませんか?
A. 共有ストレージの保存場所とファイル名の決まりに、商品ID・版・作り方・利用条件・承認状況を記録する一覧表を組み合わせれば始められます。商品数や掲載先が増えて二重管理が負担になってから、商品情報と画像を一緒に管理する仕組みを検討しても遅くありません。
商品画像の業務設計をご相談ください#
弊社(株式会社TryWith)は、システム受託開発とAIソリューション開発を通じて、EC・小売企業向けのシステム開発や、生成AIを業務に組み込む仕組みづくりを手がけています。いまの商品画像の作り方と、商品情報・写真・参照素材がどこにどの形で残っているかをうかがい、工程と担当の決め方、品質確認シート、画像と商品情報を紐づける管理の仕組みを、開発を担う立場から整理してご提案します。どの用途からAIを使い始めるかだけのご相談も承ります。
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