メインコンテンツへスキップ

食品・宅配/物流のシステム化|受注・在庫・配送を効率化する基幹&現場DX

2026.08.25

食品・宅配・物流のシステム化とは、受注・在庫・配送といった現場業務を、データとシステムでつないで効率化することです。食品・宅配・物流の現場では、受注は電話やFAX、在庫は表計算、配送は担当者の勘——と業務が分断されたまま、人手だけで回しているケースが少なくありません。しかし物流2024年問題(後述)で輸送能力の不足が見込まれるいま、人を増やして乗り切る前提は成り立たなくなりつつあります。さらに2026年4月からは、改正物流効率化法により一定規模以上の「特定事業者」に中長期計画の提出や定期報告が義務づけられ(荷主・連鎖化事業者にはCLO=物流統括管理者の選任も)、取組の状況を数字で示すことが求められるようになりました。

結論から言えば、鍵は「受注〜在庫〜配送を止めずに、一つの流れとしてつなぐこと」です。中核となる基幹システム(受注・在庫・出荷・配送の情報を一元管理する仕組み)を土台に、現場DX(ハンディ端末・WMS・ルート最適化)を段階的に重ねていく——この物流DXの順番が、無理なく効果を出す近道になります。

本記事では、なぜ今システム化が急務なのか、受注・在庫・配送のどこから手をつけるか、基幹システムと現場DXで何が変わるか、そしてどの順で導入するかまでを、食品・宅配・物流事業の経営者・情シスがそのまま検討に使える形で整理します。

なぜ今、食品・宅配・物流のシステム化が急務なのか?#

物流2024年問題で輸送能力の不足が見込まれるうえ、2026年4月からは改正物流効率化法により、一定規模以上の事業者に中長期計画の提出と定期報告が義務づけられたためです。

物流2024年問題とドライバーの時間外労働規制#

2024年4月1日から、自動車運転の業務に従事する労働者(トラックドライバーを含む)の時間外労働に年960時間の上限規制が適用されました(時間外労働の上限規制(自動車運転の業務)|厚生労働省)。ドライバーが就業できる時間が限られることで、輸送能力の不足や輸送サービスの水準低下が生じうると指摘されています。これが物流2024年問題です。

食品・宅配ではここに、賞味期限やロット・温度帯の管理、時間指定配送といった固有の難しさが重なります。人を増やせない前提で待ち時間と手作業を削るには、業務のどこに時間がかかっているかをシステムで見える化し、つなぐことが出発点になります。

3省ガイドラインは改正物流効率化法の「判断基準」へ格上げされた#

2023年6月2日に物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン|経済産業省・農林水産省・国土交通省が策定され、発荷主・着荷主に対して、トラックの荷待ちや荷役にかかる時間を把握し、2時間以内(さらに1時間以内を目標)に短縮するよう求められました。

このガイドラインは当初、自主的な取組を促すものでした。しかしその後、ここで示された取組目標は改正物流効率化法の「判断基準」(省令)に取り込まれ、法的な枠組みへと格上げされています。これまで人海戦術で吸収してきた待ち時間や手作業を減らすことは、もはや「余力があれば取り組む」課題ではなく、法令が定める基準に沿って対応すべき課題に変わりました。

2026年4月、特定事業者への規制が始まった#

2024年5月15日に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和6年法律第23号)が公布され、これにより従来の物流総合効率化法(平成17年法律第85号)は「物資の流通の効率化に関する法律」へ改称されました。本記事ではこの改正後の法律を改正物流効率化法と呼びます。2025年4月1日には荷主・物流事業者への努力義務が施行され、続く2026年4月1日から、一定規模以上の「特定事業者」に対する規制が始まっています。特定事業者には中長期計画の提出義務と定期報告が課され、取組が不十分な場合は勧告・命令、さらに罰則の対象となります(5分で分かる改正物流効率化法|国土交通省)。

特定事業者の指定基準と、CLO(物流統括管理者)を選任する義務があるかどうかは、区分によって次のように分かれます。

横スクロールできます
区分指定基準CLOの選任義務
特定荷主(第一種・第二種)年間取扱貨物量9万トン以上あり
特定連鎖化事業者年間取扱貨物量9万トン以上あり
特定倉庫業者貨物の保管量70万トン以上なし
特定貨物自動車運送事業者等保有車両150台以上なし

ここで注意したいのは、CLOの選任義務が課されるのは特定荷主および特定連鎖化事業者のみという点です。特定倉庫業者・特定貨物自動車運送事業者等は、中長期計画の提出と定期報告の対象にはなりますが、CLOを選任する義務はありません(特定事業者の指定|国土交通省)。自社がどの区分に当たるかによって、備えるべき内容が変わります。

あわせて、改正貨物自動車運送事業法により、令和7年(2025年)4月1日から運送契約の書面交付義務等が始まりました。令和8年(2026年)4月1日からは、その対象が貨物利用運送事業者にも拡大されています(貨物自動車運送事業法の改正|国土交通省)。運送契約の内容を書面で残す運用は、受発注のデータが紙やメールに散らばっているほど負担が重くなります。

中長期計画と定期報告は毎年度のサイクルになる#

特定事業者になった場合、あわせて押さえておきたいのが提出のサイクルです。中長期的な計画は毎年度提出することが基本ですが、計画内容に変更がない限りは5年に一度の提出でよいとされています(中長期的な計画の作成|国土交通省)。定期報告は、指定を受けた翌年度以降の毎年度、努力義務の実施の状況について報告する必要があります(定期報告|国土交通省)。提出期限や様式といった手続きの詳細は、指定の通知とあわせて確認してください。

計画づくりでも翌年度以降の定期報告でも、荷待ち・荷役の時間や配送の実績を数字で示せるかどうかが分かれ目になります。記録が紙と表計算に散らばったままでは、期限が来るたびに集計作業に追われることになります。日々の受注・在庫・配送のデータが自動でたまる状態をつくっておくことが、報告の負担そのものを軽くします。

食品物流ではHACCPに沿った衛生管理も義務#

食品を扱う事業者には、物流の規制とは別にHACCPへの対応も求められます。食品衛生法の改正(平成30年法律第46号)により、2020年6月1日に施行され、2021年6月1日にHACCPに沿った衛生管理が完全義務化されました。小規模な営業者等は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で対応します(HACCP(ハサップ)|厚生労働省)。

HACCPで求められるのは、管理すべきポイントを決め、その実施状況を記録し、保存することです。冷蔵・冷凍の温度記録を紙の帳票で残していると、記入漏れや転記ミスが起きやすく、問い合わせがあったときに該当ロットの記録を探し出すだけで時間がかかります。温度センサーの値を自動で取り込み、入出荷のロット情報と紐づけて保存できれば、衛生管理の記録と出荷トレーサビリティを同じデータで両立できます。物流の規制対応と衛生管理を別々の仕組みで抱え込まないことが、現場の負担を増やさないコツです。

受注・在庫・配送、どこから手をつける?#

まず受注・在庫・配送を一つの流れとしてとらえ、止まると事業に響く工程と、手作業が多い工程から着手します。

食品・宅配・物流の業務は、大きく「受注」「在庫」「配送」の3領域に分かれ、それぞれに固有の課題があります。次の図のように、自社のどこに時間とミスが集中しているか、そこに効くシステムは何かを整理すると、優先順位が見えてきます。

受注・在庫・配送の3領域と主な課題・効くシステムを並べたカード。受注:多チャネルと手入力に基幹の一元化、在庫:欠品と過剰にWMSとハンディ、配送:属人化とムダにルート最適化
受注・在庫・配送の3領域と主な課題・効くシステムを並べたカード。受注:多チャネルと手入力に基幹の一元化、在庫:欠品と過剰にWMSとハンディ、配送:属人化とムダにルート最適化

いきなり全部を入れ替える必要はありません。多くの場合、受注・在庫を一元化する基幹システムを土台に据え、そのうえで現場DXを重ねるのが現実的です。止まると売上や信用に直結する工程ほど、優先して整えます。

基幹システムで受注・在庫・配送はどう変わる?#

受注・在庫・出荷・配送の情報を一元管理し、二重入力や欠品・過剰在庫、伝票の手作業を減らせます。

基幹システムは、電話・FAX・EC・アプリなど複数チャネルの受注を一本化し、在庫・出荷・配送とリアルタイムに結びつける仕組みです。導入の前後で、業務のつながり方は次のように変わります。

現状と改善後の対比。左は受注・在庫・配送が分断され二重入力とズレが発生している状態、右は基幹システムで一元化され情報が一つの流れになった状態
現状と改善後の対比。左は受注・在庫・配送が分断され二重入力とズレが発生している状態、右は基幹システムで一元化され情報が一つの流れになった状態

分断された状態では、同じ情報を何度も入力し、在庫のズレが欠品や過剰在庫を招きます。受注から在庫・出荷までを一元化すれば、食品で重要なロットや賞味期限、温度帯の情報も一貫して引き継げ、誤出荷や食品ロスも抑えやすくなります。在庫の持ち方そのものを見直す観点は在庫の一元管理とはで詳しく解説しています。

なお、食品業界でよく話題になる納品期限の緩和(いわゆる1/3ルールの見直し)は、法律で定められた義務ではなく、農林水産省が食品ロス削減の観点から事業者に呼びかけている要請ベースの取組です(納品期限の見直し|農林水産省)。義務ではない以上、取引先ごとに運用が分かれます。納品期限のルールを取引先別の設定値として持てるようにしておけば、見直しが進んだときもプログラムの改修なしで追随できます。

現場DXは何を入れる?(ハンディ端末・WMS・ルート最適化)#

入出荷・ピッキングのハンディ端末、庫内を管理するWMS、配送を効率化するルート最適化が中心です。

現場の手作業を減らす代表的なツールは次の3つです。役割と解決する課題が異なるため、自社の詰まっている工程に合わせて選びます。

横スクロールできます
ツール主な役割解決する課題
ハンディ端末バーコードで入出荷・ピッキングを検品誤出荷、棚卸しの手間、賞味期限・ロットの取り違え
WMS(倉庫管理システム)庫内の在庫と作業を管理・指示ロケーション不明、属人的な庫内運用
ルート最適化・配車システム配送順や積み合わせを自動で計算配送の属人化、走行距離・待機のムダ

課題の大きい順に導入する#

これらを同時に全部そろえる必要はありません。誤出荷が多いならハンディ端末とWMSから、配送のムダが大きいならルート最適化から、と課題の大きい順に導入します。検品や転記といった定型作業をAIやRPAで自動化する考え方は業務自動化とはも参考になります。

紙の受注票やFAX注文書の読み取りをAI-OCRに任せる、システム間の転記をAI×RPAで置き換える、といった打ち手は、既存システムを大きく作り替えずに手作業を減らせるため、着手のハードルが低いのが利点です。具体的な進め方はAIソリューションでご紹介しています。

どの順で進める?(標準化・データ連携と優先順位)#

現状把握、受注・在庫の一元化、現場DX、標準化・データ連携、の順に、土台から積み上げます。

4段階で土台から積み上げる#

一度にすべてを変えると現場が止まります。受注〜在庫〜配送を止めないためにも、次の4段階で、土台から段階的に進めるのが安全です。

システム化の優先順位を4段階のカードで表現。ステップ1 現状把握、ステップ2 受注・在庫の一元化(基幹)、ステップ3 現場DX(ハンディ・WMS・ルート最適化)、ステップ4 標準化・データ連携
システム化の優先順位を4段階のカードで表現。ステップ1 現状把握、ステップ2 受注・在庫の一元化(基幹)、ステップ3 現場DX(ハンディ・WMS・ルート最適化)、ステップ4 標準化・データ連携
  • ステップ1 現状把握:受注から配送までの工程を棚卸しし、待ち時間・手戻り・記録の抜けがどこで起きているかを数値で押さえる
  • ステップ2 受注・在庫の一元化:基幹システムを土台に、二重入力とズレをなくす
  • ステップ3 現場DX:ボトルネックの大きい工程からハンディ端末・WMS・ルート最適化を導入する
  • ステップ4 標準化・データ連携:外部やグループとデータをつなぎ、さらに効率化する

パレット標準化とデータ連携に備える#

ステップ4では、国が進める物流標準化の流れも追い風になります。令和6年6月にまとめられた官民物流標準化懇談会 パレット標準化推進分科会 最終とりまとめ|国土交通省では、平面サイズ1,100mm×1,100mm、高さ144〜150mmを標準寸法とし、2030年度までにパレット生産数量の50%以上を標準仕様にすることが示されています。

パレットがそろえば、積み付けや荷役の手順もそろいます。自社の商品マスタや出荷単位を標準寸法に合わせて整理し、取引先とやり取りするデータの項目もそろえておくと、外部との連携がスムーズになります。どの工程を内製し、どこを外注するかの考え方はシステム開発の発注完全ガイドで解説しています。

弊社(株式会社TryWith)の支援#

弊社では、食品・宅配・物流事業の受注〜在庫〜配送を止めずに効率化するシステム化を、開発を担う立場から伴走支援しています。現状の業務とボトルネックの洗い出し、受注・在庫を一元化する基幹システムの設計、ハンディ端末・WMS・ルート最適化といった現場DXの選定と実装、既存システムや外部サービスとのデータ連携までを、優先順位を付けて一緒に進めます。中長期計画や定期報告に必要な実績データが自動でたまる形に業務を組み替えることも、設計の段階から織り込みます。

受託開発とスポットCTO的な関与の両方を手がけているため、「何から手をつければいいか分からない」「現場が止まらないか不安」といった段階からご相談いただけます。要件定義から設計・開発・運用までをワンストップでお引き受けする体制はシステム開発にまとめています。

パッケージで足りる部分はパッケージを活かし、自社固有の業務は個別に作る——過不足のない落としどころを、現場とコストの両面から一緒に整理します。

よくある質問(FAQ)#

Q. 何から始めればいいですか?

A. まず受注から配送までの工程を棚卸しし、待ち時間や手戻りがどこで発生しているかを数値で押さえます。多くの場合は受注・在庫を一元化する基幹システムを土台に据え、そのうえでハンディ端末・WMS・ルート最適化といった現場DXを重ねます。

Q. 自社は改正物流効率化法の「特定事業者」に当たりますか?

A. 指定基準は、荷主・連鎖化事業者が年間取扱貨物量9万トン以上、倉庫業者が貨物の保管量70万トン以上、トラック運送事業者が保有車両150台以上です。該当すると中長期計画の提出と定期報告が義務となり、取組が不十分な場合は勧告・命令や罰則の対象にもなります。中長期的な計画は毎年度の提出が基本で、内容に変更がない限りは5年に一度の提出でよいとされています。

Q. CLO(物流統括管理者)は、どの事業者が選任する必要がありますか?

A. CLOの選任義務が課されるのは、特定荷主および特定連鎖化事業者のみです。特定倉庫業者や特定貨物自動車運送事業者等は、中長期計画の提出と定期報告の対象にはなりますが、CLOを選任する義務はありません。自社がどの区分で指定されるかを先に確認してください。

Q. WMSと基幹システムは何が違いますか?

A. 基幹システムは受注・在庫・出荷・配送など事業全体の情報を一元管理する仕組み、WMS(倉庫管理システム)は庫内の在庫と作業に特化した仕組みです。両者を連携させると、受注から出荷までが一貫します。

Q. 物流2024年問題に、システムでどう対応できますか?

A. 荷待ちや荷役、検品・転記といった手作業と待ち時間をシステムで見える化・削減し、限られたドライバー・人員で回せるようにします。配送のルート最適化も走行や待機のムダを減らします。

Q. 既存のシステムやハンディ端末は使えますか?

A. 使える場合が多いです。まず現状の構成やデータの持ち方を確認し、活かせる部分は残して、不足する連携や機能を補う形で設計します。全面刷新ありきではありません。

Q. 現場を止めずに導入できますか?

A. 段階的に進めれば可能です。一度に全部を切り替えず、土台となる一元化から始め、工程ごとに順次移行することで、受注〜配送を止めずに切り替えられます。

まとめ#

食品・宅配・物流のシステム化は、受注〜在庫〜配送を「止めずに、つなぐ」ことが要です。物流2024年問題で輸送能力の不足が見込まれ、荷待ち・荷役の短縮も求められるいま、人手頼みの分断された業務のままでは立ち行きません。加えて2026年4月からは改正物流効率化法の特定事業者への規制が始まり、中長期計画の作成や定期報告が求められます(荷主・連鎖化事業者にはCLOの選任も)。食品を扱うなら、HACCPに沿った衛生管理の記録も欠かせません。受注・在庫を一元化する基幹システムを土台に、ハンディ端末・WMS・ルート最適化といった現場DXを段階的に重ねる——この優先順位で進めれば、現場を止めずに効率化できます。国が進めるパレットやデータの標準化に合わせておけば、外部との連携もしやすくなります。

出典:時間外労働の上限規制(自動車運転の業務)|厚生労働省/物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン|経済産業省・農林水産省・国土交通省/5分で分かる改正物流効率化法|国土交通省/特定事業者の指定|国土交通省/中長期的な計画の作成|国土交通省/定期報告|国土交通省/貨物自動車運送事業法の改正|国土交通省/HACCP(ハサップ)|厚生労働省/納品期限の見直し|農林水産省/官民物流標準化懇談会 パレット標準化推進分科会 最終とりまとめ|国土交通省

「受注〜配送のどこから手をつけるべきか整理したい」「中長期計画や定期報告に向けて、実績データが残る形に業務を組み替えたい」という場合は、現状整理からお手伝いします。まずはお問い合わせはこちらからお気軽にご相談ください。

タグ

#物流#物流DX#食品物流#WMS#基幹システム#物流2024年問題#システム開発